概要
良くも悪くも話題になったAirPodsMax。実際に3ヶ月使い込んでみてどうだったのか、レビューを書いていこうと思います。
一応私は音響の仕事をしておりまして(まだまだゴミカスのようなレベルですが)、サウンドエンジニア的視点で音の感想を書き記していこうと思います。皆さんの参考になれば幸いです。
結論!AirPodsMaxの使用感まとめ
【良い点】
・解像度が恐ろしく高い
・周波数レンジが広い
・ダイナミクスが豊か
・開放型を装着しているかのような音場の広さ
・ノイズキャンセリングが強力なのに不快感がない
・音漏れが少ない。(音量8割くらい上げていても電車内では全く気になりません。)
・充電持ちが良い
【悪い点】
・携帯性が悪い
・かなり音量を上げないと鳴らし切れていない感がある
・コンピュテーショナルオーディオのせいで音色を信用できない(モニターに向いていない)
・人目が若干気になる(「おまえそれほんとに買ったんだw」的被害妄想)
購入理由
なんで僕がこんな7万円近くもするヘッドフォンを買ったのかというと、単純に音が好きだからです。
ヨドバシカメラで初めて視聴したときは、その音場の広さに驚きました。開放型かよ!と突っ込みたくなるくらいに再生空間が広いんです。しかもノイズキャンセリング。ポータブル環境で音を聴く限りにおいては、AirPodsMaxの右に出るものは無いと言っても良いと思います。
具体的な名前を出すと角が立ちそうなので名前は伏せますが、同じくワイヤレスヘッドフォンで有名な4万円弱の製品や、5万円強するヘッドフォンなど、何回も聞き比べしましたが、再生能力もノイズキャンセリング性能も圧倒的にAirPodsMaxがいいなと僕は感じました。
恐らく5万円以下で作れるワイヤレスヘッドフォン内のDAコンバーターやアンプの性能の限界なのだと推測しますが、他社競合製品、どれも周波数レンジ・ダイナミックレンジ共に狭く感じます。ヘッドホンだけどワイヤレスイヤホンっぽい音というか、繊細な表現に欠ける感じです。
以下、レビューの詳細です。
良い点
【◎ノイズキャンセリングについて】
上述したライバル製品のノイズキャンセリングは、飛行機に搭乗して鼓膜がおかしくなったような違和感があったり、単にキャンセリング性能が弱かったりするなと感じました。
特にノイズキャンセリングに違和感があると、僕は音楽に集中し辛く、すぐ外してしまいたくなるので苦手でした。
AirPodsMaxのノイズキャンセリングは、違和感が無いのに強力なので、理想的なノイズキャンセリングと言えるのかなと思います。
【◎解像度の高さについて】
AirPodsMaxはとにかく解像度が高いです。
僕はUNIVERSAL AUDIOのApollo Twin Mk2を使い続けているのですが、初めてRMEのADI-2で音楽を聴いたときのような感動がありました。焦点がびっちり合ったような、音像の細部がはっきりとしたような感覚です。
AirPodsMaxで音楽を聴いていると、Reverbが溶けていく最後のキワの部分まで聴こえてきたり、ハイハットが空間に響く一瞬のステレオ感だったり、空気感などが良く聞こえます。書いてるとキリが無いのですが、アコギのアタック性分の忠実さなどは息を飲むものがあります。また、Distorsionギターの歪みのビット感、と言えば良いのか分かりませんが歪みが単にガシャガシャと破綻して聴こえるのではなく、つぶつぶとした感じも聞き取ることができます。
反面、ハイがキツく感じることが多く聴き疲れしやすいです。AirPodsMaxの最大の弱点は周波数特性がフラットでないという点です。ドンシャリ気味です。これまでのアップル製品はフラットっぽいイヤホンが多かったのに何故。
【◎音場の広さについて】
AirPodsMaxの大きな特徴のひとつに音場の広さがあります。
僕は普段仕事でAKGのK701という開放型のヘッドフォンを使用しています。空気感を含む音場の広さが気に入っているのですが、AirPodsMaxは密閉型にも関わらずそれに近い空気感のある開放的な音場を再生できていると思います。さすがに701ほどでは無いですが。
音場を広くするには空気感の再現が必要になるため、超高音域の再生能力が鍵となると思うのですが、それだけAirPodsMaxには質の高いDAやらなんやらが搭載されているのかなとひとり妄想しています。
【◎端末の入れ替えがスムーズ】
iPadでYoutubeを見ていたが、トイレに行くのでiPhoneに切り替えたい時など(行儀の悪さはさておき)、特に設定をせずにそのままiPhoneの音をMaxから再生することができます。
細かい点ですが、端末との接続にストレスが無いことは毎日使うものなので重要ですよね。
前にSHUREの215のワイヤレスを使っていた時は、何故か1週間に一回くらい接続を再登録しなきゃいけなくて不便でした。
悪い点
【×ドンシャリ気味の音】
さっきも書いたのですが、周波数特性がフラットではありません。
ハイがきついので長く聴いていると耳が痛くなるし、ローも強めなので若干キックが浮いて聴こえます。
【×やっぱり重い!】
着け心地自体は、パンケーキのようなふわふわのイヤーパッドとメッシュ素材のヘッドバンドでかなり良いです。ですが重量自体はやはり重いです。実際に測ってみるとで384gありました。K701は298g。(関係ないですがK701、表記と実測の重さにかなり差があるけど良いのかw)
ずっと付けてると耳が痛くなりますね。まあ密閉型のヘッドフォンはどれも痛くなりがちですけど。
【×携帯性の悪さ】
そしてやっぱり携帯性も悪いです。
ユニット部分を回して平たくすることはできますが、それまでです。
カバンに入れるとなるとかなりのスペースを占有します。
加えて、首にかけていると首が苦しく結構邪魔です。
締め付け感と重さがきつく、長時間首にかけてカッコつけるのは難しいです。
【見た目について】
買う前に僕が一番嫌だったのは見た目でした。
ソニーやゼンハイザーのヘッドフォンの方が圧倒的にカッコいいなと感じていました。
しかし実際に使い込んでいると目が慣れてるだけかもしれませんが、そこまで悪く無いよう思えてきました。むしろミニマリズムなデザインと金属の光沢感が上品でいいのかなと思います。Appleに洗脳されてるだけかもしれませんが…。
【×可変性のある音】
AirPodsMaxはコンピュテーショナルオーディオという機能があり、ヘッドフォンの装着環境に応じて音を変化させているそうです。
ありがたいことなのですが、それはすなわち勝手に音を変えているということでもあり、再生音に信用が置けません。
最近そのことが如実にあった経験をしたのですが、それはセンター定位が怪しく感じられたことでした。
原因を辿るとウレタン性の耳の周りが面になっている(糸じゃない)マスクをしていたことが原因なのですが、普段仕事してる際も同じマスクをしていることが多いのですが、900STやK701をマスクと併用していてセンター定位がブレるようなことは一度もありません。なのでおそらく原因はコンピュテーショナルオーディオのせいなのかなと思いますが、勝手に変わるせいで原因の特定も難しく、とにかくこういうところが嫌です。
レビューまとめ
音質的には7万円相当の価値があると思います。僕が使っているApollo Twin MK2をK701やゼンハイザーのHD650、PHONONのSMB-02から出力した音よりも、AirPodsMaxの方が高解像度に感じます。
これってかなりすごいことだと思っておりまして、ヘッドフォンの中に専用機並みかそれ以上の性能の良いDAコンバーター、クロック、アンプなどを搭載してるわけです(違ったらほんとすみません)。それが7万円と思えばそう高くはない買い物なのかなと思います。
余談ですが、ワイヤレスヘッドフォンの強みはまさにそこにあると思っています。iPhoneから音声をアナログ出力させたいと思ったらライトニングの変換アダプタを噛ませなきゃいけませんよね。実はあの千円ちょっとで買えるライトニング変換の中にDAコンバーターが入っています。そこから出力された音声が良いとは思えませんし、実際解像度が低くレンジの狭いしゃかしゃかした音だと感じます。その安いアダプターを介した音ではなく、高品質なワイヤレスヘッドフォンを買うことで、高品質なコンバーターを介した音を聴くことができるわけです。その点で言えば高額なワイヤレスヘッドフォンを買う意義はあるのかなと思います。ヘッドフォンとオーディオインターフェースをセットで買っているような感じ。
とはいえAACコーデックの規格上、ロスレスで音源を聴けないことは気になります。へぼいDA&アンプでロスレスを聴くのを取るか、圧縮音源を良い再生環境で聴くのどっちを取るべきかを考えると僕は後者なのですが、AirPodsMaxの市場価値を下げる要因になることは間違いありません。
長くなりましたが、こんな感じです!